2013年7月10日水曜日

薬物の有毒性

薬物事件(自白事件)の弁護人は、依頼者(被告人)に、
いかに薬物の害悪を理解してもらうか、また裁判所に、被告人質問で、


「被告人が薬物の害悪について認識を新たにしたこと」


「反省して二度としないと言えること」


を伝えるかについて、苦労することがある。



特に、「大麻」の場合、

国や地域によっては合法化あるいは極めて寛大な取り扱いを受けている

という問題がある。



また調書等では、大麻を使った場合に、

「感覚が研ぎ澄まされる」「幸福感に満たされる」

など、プラスの効果がおおっぴらに語られているケースも多い。


検察官から、


「結局、あなたはどうして大麻が禁止されているか分かっていますか?」

「法律が禁止しているからいけない、というだけではなくて、どうしていけないんですか?」


と訊かれて、立ち往生してしまう被告人もいる(はずである。)



①使用時の状態によっては極度の不安や恐怖に襲われパニックになることがある、

②大量使用すると幻覚を生じることもある、

③大麻の使用が、ある種の精神障害を誘発することがある、

④大麻の効果が切れた後、数時間にわたり身体機能が低下する、

⑤大麻の喫煙でガンのリスクが高まる等々、


専門書には記載があるが、
「自分は大丈夫」「たまにやるだけ」「上手くコントロールできる」「タバコだって同じ」
という言い分に対しては無力に感じられる。


そこで、


①覚せい剤など他のより害悪の強い薬物への入口になる、

②違法薬物の購入は、暴力団等の資金源となる、

③結果的に家族はじめ周囲の人を苦しめ迷惑をかける、


などといった説明が付け加えられることが多いが、
果たして本質的・説得的な理由だろうか。

などと感じていたところ、ある本の記載をきっかけに、
次のような説明(「大雑把」な点はご容赦)に行き着いた。



①大麻による陶酔感は、大麻に含まれる物質のうち、
デルタ‐9‐テトラヒドロカンナビノイド(「THC」)が脳内で作用して、
人工的に過剰な刺激を生み出すことによる。

②本来、自然に生じる陶酔感・幸福感は、いわゆる「脳内麻薬」の
作用(ドーパミンの分泌によるA10神経の刺激)によることが分かっているが、
人間はこの陶酔感・幸福感を一度得ると、これを再度得たいがために努力するのである。
この仕組みは、人が人として生きていくための極めて基本的で重要なものである

③ところが、薬物を用いて人工的にドーパミンの分泌を繰り返した場合、どうなるか。
平常時のドーパミン分泌に悪影響があることは容易に想像できるし、そもそも、苦労して「自然な」陶酔感・幸福感を得る必要がなくなってしまう。その結果は、、、



要約すれば、

「薬物への依存は、正常な脳の機能を障害する」

という、何となく当り前のような話ではある。
いずれにしてパターナリスティックな説明にしかならないのだが、、、。

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